○下野市職員の分限処分の指針
令和7年7月30日
訓令第14号
下野市職員の分限処分の指針(平成25年下野市訓令第4号)の全部を改正する。
第1 分限処分の趣旨
地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「法」という。)に定める分限処分は、職員が情実に左右されず、全体の奉仕者として公正に職務を遂行できる環境を確保するために設けられた身分保障を前提に、その職に必要な適格性の欠如等が認められる職員が存在して公務能率の維持・確保ができなくなる恐れのある場合に、公務の適正かつ能率的な運営を図るために当該職員を免職、降任又は休職させるものである。
この指針は、分限事由に該当するか又は可能性のある職員に対して、次に掲げる事項のための対応措置を定めることを目的とする。
(1) 公務能率を阻害している職員にその改善を求めること。
(2) 改善が見込めない場合、厳正に分限処分を行うこと。
(3) 恣意的な処分とならないよう、適切かつ合理的な判断を行うこと。
なお、この指針は、法に基づき、一般職に属する全ての地方公務員に適用するものとする。
第2 分限事由と分限処分の内容
職員が、所定の手続を経てもなお、次の分限事由に該当すると判断された場合は、それぞれに定める分限処分を行う。
1 勤務実績不良(法第28条第1項第1号関係) 免職又は降任
職員が担当すべきものとして割り当てられた職務内容を遂行してその職責を果たすべきであるにもかかわらず、その実績が上がらない場合をいい、当該職員の出勤状況や勤務状況が不良である場合もこれに当たる。
2 心身の故障(法第28条第1項第2号、第2項第1号関係) 免職、降任又は休職
心身の故障を治癒するため病気休暇期間満了後も引き続き仕事を休む場合、また、将来回復の可能性のない、あるいは、分限休職期間中には回復の見込みが乏しい長期の療養を要する疾病のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
3 適格性欠如(法第28条第1項第3号関係) 免職又は降任
職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に起因してその職務の遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合
4 受診命令違反(法第28条第1項第3号関係) 免職
「病気による休職期間の終了」、「心身の故障と思われる理由による勤務実績不良又は適格性欠如の疑い」について、産業医と市が指定した医師1人(以下「医師2人」という。)への受診命令に従わない場合
5 行方不明(法第28条第1項第3号関係) 免職
1月以上にわたる行方不明の場合
第3 分限処分の検討が必要となる事例と対応措置
1 勤務実績不良又は適格性欠如
(1) 対応措置が必要となる例
ア 毎日のように初歩的な業務ミスを繰り返して作業能率が著しく低い状況であるとともに、定められた業務も怠ることが多く、勤務実績が著しく悪い。
イ 無断欠勤や職場での無断離席を繰り返し、上司の注意・指導にも関わらず来訪者や同僚等としばしばトラブルを引き起こして来訪者等からの苦情が絶えない。その結果、当該職員の業務が停滞しているだけでなく同僚職員の職務遂行にまで悪影響を及ぼしている。
(2) 対応措置
ア 勤務実績不良の職員又は適格性欠如の疑いを抱かせるような問題行動を起こしている職員に対しては、一定期間にわたり、注意・指導を繰り返し行うほか、必要に応じて、担当業務の見直し、研修等を行い、それによっても勤務実績不良の状態又は適格性欠如の疑いを抱かせる状態が継続する場合には、分限処分が行われる可能性がある旨を警告する文書を交付する。その上で、一定期間経過後もこれらの状態が改善されていないことにより当該職員が勤務実績不良又は適格性欠如に該当するときには、分限処分を行う。
(ア) 措置
a 注意・指導、担当業務の見直し等
総務人事課及び所属長は、勤務実績不良の職員(勤務実績不良の徴表と評価することができる事実が認められる職員をいう。)又は適格性欠如の疑いを抱かせるような問題行動を起こしている職員(適格性欠如の徴表と評価することができる事実が認められる職員をいう。)に対し、勤務実績の改善を図るため又は問題行動を是正させるための注意・指導を繰り返し行うほか、必要に応じて、担当業務の見直し、配置換え又は研修を行うなどして、勤務実績不良の状態又は適格性欠如の疑いを抱かせる状態が改善されるように努める。
b 警告書の交付
上記aの措置を一定期間継続して行っても勤務実績不良の状態又は適格性欠如の疑いを抱かせる状態が続いている場合には、任命権者は、当該職員に対して、次に掲げる内容の記載がある文書(以下「警告書」という。)を交付する。
(a) 勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる具体的事実
(b) 勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる状態の改善を求めること。
(c) 今後、勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる状態が改善されない場合には、法第28条第1項第1号又は第3号に基づき分限処分が行われる可能性があること。
c 弁明の機会の付与
任命権者が、職員に上記bの警告書の交付を行った場合は、当該職員に弁明の機会を与える。
d 警告書交付後の観察
総務人事課及び所属長は、警告書の交付後も一定期間注意・指導等を行いつつ、勤務実績不良の状態又は適格性欠如の疑いを抱かせる状態が改善されているかどうか、注意深く観察・確認を行う。
e 分限処分
任命権者は、上記aからdまでの措置を講じたにもかかわらず、職員の勤務実績不良の状態又は適格性欠如の疑いを抱かせる状態が改善されていないことにより、当該職員が法第28条第1項第1号又は第3号に該当すると判断した場合は、分限処分を行う。
(イ) 留意点
a 資料収集
勤務実績不良又は適格性欠如に該当するか否かの判断は、単一の事実や行動のみをもって行うのではなく、一連の行動等を相互に有機的に関連付けて行うものであるので、客観的な資料を収集した上で行う必要があり、特に、仕事上の失敗・トラブル・第三者からの苦情等の具体的な事実が発生した場合には、その都度、詳細に記録を作成しておく。また、注意・指導、警告書の交付等の措置を行った場合は、その内容を記録しておく。
b 問題行動が心身の故障に起因すると思われる場合
問題行動が心身の故障に起因すると思われる場合には、所属長は、職員に積極的に話しかけて事情を聴くほか、必要に応じ同僚等に職員の状況の変化の有無を聞き、また、衛生管理者、産業医、専門家等と対応を相談する。
c 懲戒処分との関係
問題行動が懲戒処分の対象となる場合には、任命権者は、総合的な判断に基づいて懲戒処分を行うなど厳正に対応する必要がある。
d 降任と免職
分限処分を行う場合、下位の職であれば良好な職務遂行が期待できると判断するときには降任処分とし、下位の職でも良好な職務遂行が期待できないと判断するときには免職処分とする。
e 行為の様態等に応じた措置の省略
問題行動の様態や業務への影響等によっては、任命権者の判断と責任に基づいて、裁量の範囲内で、警告書の交付などの措置を省略することができる。
2 心身の故障
(1) 対応措置が必要となる例
ア 3年間の病気休職期間が満了するにもかかわらず、病状が十分に回復せず、今後も職務遂行に支障があると認められる。
イ 心肺機能停止後昏睡状態のため、病気休職中であるが、今後回復して就労可能となる見込みがない。
ウ 心身の故障のため、3年以上にわたって病気休暇や病気休職と短期間の勤務とを繰り返している。
(2) 対応措置
3年間の病気休職期間が満了するにもかかわらず心身の故障の回復が不十分で職務遂行が困難であると考えられる場合、病気休職中であって今後職務遂行が可能となる見込みがないと判断される場合又は病気休暇や病気休職を繰り返しそれらの累計期間が3年を超え、そのような状態が今後も継続して、職務遂行に支障があると見込まれる場合には、医師2人の診察を受けさせて、法第28条第1項第2号に該当するかどうかを判断する。
ア 措置
(ア) 医師2人による診断
任命権者は、上記(2)の判断を行うために、医師2人の診察を受けるよう職員に促す。この場合において、職員が医師2人の診察を受けようとしない場合には、職務命令として受診を命ずる。
(イ) 医師2人の診断結果による判断
a 医師2人により心身の故障があると診断された場合
医師2人によって、長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治ゆし難い心身の故障があるとの診断がなされ、その疾患又は故障のため職務遂行に支障があり、又は職務遂行に堪えないことが明らかな場合は、分限処分とする。
b 医師2人から心身の故障があるとの診断が得られなかった場合
医師2人のうち1人が、長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治ゆし難い心身の故障があるとの診断をしなかった場合には、法第28条第1項第2号に該当すると判断することはできず、職員本人及び主治医・産業医等と相談の上、円滑な職場復帰を図っていくなどの対応を行う必要がある。
イ 留意点
(ア) 医師による適切な診断を求める努力
心身の故障が回復する可能性についての判断は、医師の専門的な診断に基づく必要があるため、職場の実態や職員の職場における実情等について、診断する医師の十分な理解を得ることなどを通じて、適切な診断を求めていくことが必要である。
(イ) 病気休職期間満了前からの準備
3年間の病気休職期間が満了する場合には、その期間満了前から、当該職員や主治医と緊密に連絡をとって病状の把握に努め、医師2人の診断を求める必要があるかどうか検討しておく。
(ウ) 複数の異なる内容の心身の故障が原因の場合
病気休暇や病気休職を繰り返してその累計期間が3年を超える場合であっても、例えば、精神疾患の病状が回復し職場復帰した後に交通事故による外傷によって病気休職等とされた場合のように、当該病気休職等の原因である心身の故障の内容が明らかに異なるときは、上記(1)の対応措置が必要となる例には該当しないものとして取り扱う。
3 受診命令違反
(1) 対応措置が必要となる例
ア 3年間の病気休職期間満了に当たって、職務遂行能力の有無を把握し、職務復帰が可能であるか否かを判断するため、再三にわたり医師2人の受診を命じたにもかかわらず、これらの命令に従わなかった場合。
イ 第3の1の勤務実績不良又は適格性欠如の例に該当する場合で、問題行動が心身の故障に起因すると思われたことから、第3の1(2)アの対応措置を講ずる中で、再三にわたり医師2人の受診を命じたにもかかわらず、これらの命令に従わなかった場合。
(2) 対応措置
3年間の病気休職期間が満了するに当たって、心身の故障の回復が不十分で職務遂行が不可能であると考えられる職員又は勤務実績不良若しくは適格性欠如の疑いを抱かせるような問題行動を起こしている職員について、再三にわたり医師2人の受診を命じたにも関わらずこれに従わない場合には、受診命令書により医師2人の受診を命じ、これに従わないときは、法第28条第1項第3号により免職とする。
ア 措置
(ア) 受診命令書の交付
次に掲げる内容の記載がある受診命令書を交付して受診を命ずる。
a 任命権者が医師2人の受診を受け、診断書を提出するよう命ずること。
b この受診命令は、法第28条第1項第2号に該当する可能性があるか否かを確認することを目的としたものであること。
c 正当な理由なくこの受診命令に従わない場合、法第28条第1項第3号に該当するとして分限免職が行われる可能性があること。
(イ) 分限免職
上記(ア)の受診命令書の交付による受診命令に対し、職員が正当な理由なく従わない場合、法第28条第1項第3号により分限免職とする。
イ 留意点(勤務実績不良又は適格性欠如の要件を確認しておく必要性)
分限処分は、法第28条第1項第3号に基づく処分であるため、職員が正当な理由なく受診命令を拒否したことのほか、当該職員が有していると思われる疾患若しくは故障のため職務執行に支障があり、又は職務遂行に堪えない状況にあると認められること、受診命令拒否その他の行動、態度等から、当該職員が適格性欠如であると認められることを客観的資料により確認して行うことが必要である。
4 行方不明
(1) 対応措置が必要となる例
長期間にわたり、行方不明となっている。
(2) 対応措置
原則として、1月以上にわたる行方不明は免職とする。
ア 留意点
被処分者となる職員の所在を知ることができないときには、処分内容を公示する。
第4 指針の施行に必要な事項
この指針の施行に必要な事項(分限処分の判断基準、審査機関、手続、手順、様式等は別に定める。
附則
(施行期日)
1 この訓令は、公布の日から施行する。
(経過措置)
2 この指針の施行の際現に病気休職中若しくは病気休暇中である者及び病気休職若しくは病気休暇が満了していた者については、当該期間を通算して適用する。